WH-6800 分解 玉当たり調整 振れ取り オーバーホール
定番ミドルグレードホイールの1つ、シマノ ULTEGRA WH-6800。 安い中古を購入したため、ホイール交換前に状態チェックを兼ねて分解し、玉当たり調整、振れ取り、グリスアップなど、各種オーバーホール
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WH-6800の製造工程でできると考えられているリムの先端と先端に杭? を打ち込んで繋いでいると考えられているリム内側の謎の丸い凹み。 前オーナーがチューブレスで使用していた事とは関係なく、チューブに影響が無いようフラットにするためのコーティングがフロントホイールには劣化して剥がれかけた状態で残っていましたが、リアホイールは完全に剥がれており、丸い凹みをフラットに塞ぐ修理が必要
丸い凹みがフラットになれば修理のための素材は何でも良いので、接着剤を垂らして乾燥後に穴をフラットに整え修理完了
振れ取りで使用するのはミニモンキーレンチ。 僅かに遊びのあるニップル回しとは違い、何度もニップルのジャストサイズに調整する必要がありますが、スポークテンションが高くなってから回しにくくなるニップルを舐めてしまう確率が格段に下がるのでおすすめ。 WH-6800の振れ取りをしていると、なぜかニップルを回しても全然振れが取れないポイントがあり、反応があるまで何度もニップルを回しているとスポークからパーン!! と爆発音。 ニップルを回し過ぎてスポーク先端が破断? せっかくお安い好条件で購入できたものの、WH-6800用スポークの取り寄せが必要になり、結局高い買い物になってしまったと落ち込んでいると、なぜかスポークは破断しておらず無事
(´・ω・)_/ WH-6800のスポーク先端と、ハブ側、リム側のニップル。 WH-6800のニップルはリム側とハブ側にそれぞれあり、それを知らずにリム側のニップルをひたすら回して振れ取りしていた事でハブ側のニップルとスポークが一緒に回転。 その影響でスポークテンションがかかったまま勢いよくニップルからスポークが外れた瞬間に爆発音が発生したのが今回の作業ミス
幸いスポーク先端のネジ山にダメージは無くホイールの振れをとる事が出来ましたが、WH-6800はハブ側にもニップルがあるため、ニップルを回した際にブレードスポークが緩まないためのブレードスポークホルダーが必須。 WH-6800は傷が付いたり、曲がったり、折れたりした際のスポーク交換が非常に楽な設計ですが、おかげで久々に良い汗(冷や汗)をかきました ^^;
左右のロックボルトに5mmの六角レンチを差し込み、反時計回りに回して左ロックボルトの取り外し
右側はハブ軸と一体になっているため、取り外し可能なのは左ロックボルトのみ
玉押し保持間座(黒いギザギザのパーツ)がロックボルトの圧力を直接受けないためのツメが付いた薄いスプリングワッシャーを持ち上げて取り外し(玉押し保持間座の上に乗っかっているだけ)
黒い防水キャップの横にある長方形の隙間にマイナスドライバーを差し込んで防水キャップの取り外し。 ハブに傷が付くので、マイナスドライバーの先端はティッシュなどを巻いて作業するのがおすすめ
(´・ω・)っ ディーラーズマニュアル 35ページ参照
防水キャップの取り外しが完了。 ここまでのWH-6800のハブの分解手順は、防水キャップ、ロックナット、どちらからでもOK
ハブ軸と玉押しの位置関係を固定している玉押し保持間座(黒いプラスチックのパーツ)を持ち上げて取り外し
玉押しを反時計回りに回してハブ軸から取り外したら、ハブ軸の引き抜き
ボールベアリングはリテーナーに収まっているタイプなので、ハブ軸引き抜き後に落下して紛失する心配は無し。 黒いシールを取り外すとグリスアップしやすいですが、固くはまっていて取り外す事でシールが変形する恐れもあるためそのままにし、内部の隅に偏って固まっているであろうハブグリスを有効活用するべく、オイルを1~2滴ベアリングに垂らしたら粘度を少しだけ低くしたグリスでグリスアップ
続いてWH-6800、リアハブのオーバーホール(分解してグリスアップと玉当たり調整)
リアハブの分解手順はフロントホイールと一緒ですが、フリーは構造上チェーンやスプロケのオイルに付着した砂粒などのゴミが落下して入り込みやすい位置関係にあり、ベアリングもリテーナーがないオーバーホール中に落下しやすいタイプ。 慎重にハブ軸を抜いたとしても0.1mmにも満たない見えない砂粒が混入して本来のハブの寿命を縮めてしまいやすく、紫色のハブグリスもあふれ出ているのでこちらは完全な洗浄とグリスの打ち替えが必要
緩めにはまっている黒いシールを取り外し、内部にグリスが流れていかないようワイプオールやウェスにパーツクリーナーを吹き付けグリスの拭き取り。 フリー内側のスプロケのロックリングを固定するネジ溝には0.1mm以下の砂粒などが入り込んでいるので小さいブラシなどでかき出し、念入りに洗浄。 フリーを取り外す場合は14mmの六角レンチが必要
(´・ω・)_/ 黒いシールをはめた時にベアリングが接する場所以外にグリスが付着しないよう、精密機器の取り扱いレベルの慎重さでオイルを添加してハブグリスと同程度に粘度を調整したグリスをまとわせたベアリング13個を並べ、シールを戻してWH-6800のリアハブのグリスアップが完了。 これくらいグリスが入っていれば偏ったり、多少揮発しても常にベアリングにグリスが付着し続け当分メンテナンスせずに済む計算
ハブ軸を差し込んでフリー側を下にしたらギザギザの玉押しをハブ軸に入れて時計回りに回していき、丁度良い玉当たりの感触の位置でストップ
黒い玉押し保持間座を被せれば玉押しとハブ軸の固定ができ、WH-6800の玉当たり調整は完了
この玉押し保持間座が良く出来ていて、表側の穴は丸形の両端をカットしたハブ軸の先端形状と合致。 内側のギザギザは玉押しのギザギザと噛み合い、ハブ軸と玉押しの位置関係を固定するデジタルアジャストシステムと呼ばれる仕組み。 ブレーキレバーのアジャスターを固定するロックリング同様、なぜか力のかかりそうな一部パーツをプラスチック製にしてユーザーを心配させるのがシマノ流。 既に2人のオーナーが使用した中古のWH-6800ですが、破損もクラックもないので回転が渋くなるほどゴリゴリに玉当たり調整しない限りは玉押し保持間座はプラスチック製でも割れず、耐久性、寿命には意外と問題が無いようです(´・ω・`)
非常に短時間でWH-6800の玉当たり調整を終えられるデジタルアジャストシステムですが、手に持って完璧と感じる感触と、実際に走行した時にハブに加わる力にはかなりの違いがあるため、走行中のハブの負荷を再現して玉当たりを確認するためにはフレームに取り付けた状態でリムを左右に動かしてハブのガタつきを確認する必要あり。 案の定玉当たり調整が不完全でハブがわずかにガタガタしており、フロントホイールの玉当たり調整はやり直し
スポークの本数、位置を目安に玉当たりをチェックしていると、1ヶ所だけわずかにガタがある所があり、少しだけ玉当たりを強く調整すれば解決するものの、1つだけ若干小さめのベアリングが入っている? と仮定すると、他のベアリングにとっては悪影響になるためフロントホイールのハブの玉当たり調整は終了
リアホイール側は手で感じる玉当たり調整と一致していたので、WH-6800の玉当たり調整は終了。 従来の玉当たり調整に比べれば非常に楽なデジタルアジャストシステムですが、実際には納得いくまでフレームに取り付けてのチェック作業が何度か必要。 組み立てていないフレームやクイックよりも着脱の早いスキュワーがあると玉当たり調整のガタを確認するための作業スピードが上がるのでおすすめ(´・ω・`)
これでWH-6800のオーバーホールは終了。 中古のホイールを購入するとトータル費用は抑えられますが、すぐには走れずメンテナンスにも時間がかかるので、良い子は新品もしくは走行距離の少ない新古品辺りを買うのがおすすめ(´・ω・`)
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リムの穴埋め
WH-6800の製造工程でできると考えられているリムの先端と先端に杭? を打ち込んで繋いでいると考えられているリム内側の謎の丸い凹み。 前オーナーがチューブレスで使用していた事とは関係なく、チューブに影響が無いようフラットにするためのコーティングがフロントホイールには劣化して剥がれかけた状態で残っていましたが、リアホイールは完全に剥がれており、丸い凹みをフラットに塞ぐ修理が必要
丸い凹みがフラットになれば修理のための素材は何でも良いので、接着剤を垂らして乾燥後に穴をフラットに整え修理完了
振れ取りでスポーク爆発
余計な費用が掛からない手渡し1.5万で購入した中古のWH-6800。 ホイールに振れは無いと言う話でしたが、現地での確認では手で持って回したため振れ具合は良く分からず。 帰宅してチェックしてみると気になる振れがあるのを確認振れ取りで使用するのはミニモンキーレンチ。 僅かに遊びのあるニップル回しとは違い、何度もニップルのジャストサイズに調整する必要がありますが、スポークテンションが高くなってから回しにくくなるニップルを舐めてしまう確率が格段に下がるのでおすすめ。 WH-6800の振れ取りをしていると、なぜかニップルを回しても全然振れが取れないポイントがあり、反応があるまで何度もニップルを回しているとスポークからパーン!! と爆発音。 ニップルを回し過ぎてスポーク先端が破断? せっかくお安い好条件で購入できたものの、WH-6800用スポークの取り寄せが必要になり、結局高い買い物になってしまったと落ち込んでいると、なぜかスポークは破断しておらず無事
(´・ω・)_/ WH-6800のスポーク先端と、ハブ側、リム側のニップル。 WH-6800のニップルはリム側とハブ側にそれぞれあり、それを知らずにリム側のニップルをひたすら回して振れ取りしていた事でハブ側のニップルとスポークが一緒に回転。 その影響でスポークテンションがかかったまま勢いよくニップルからスポークが外れた瞬間に爆発音が発生したのが今回の作業ミス
幸いスポーク先端のネジ山にダメージは無くホイールの振れをとる事が出来ましたが、WH-6800はハブ側にもニップルがあるため、ニップルを回した際にブレードスポークが緩まないためのブレードスポークホルダーが必須。 WH-6800は傷が付いたり、曲がったり、折れたりした際のスポーク交換が非常に楽な設計ですが、おかげで久々に良い汗(冷や汗)をかきました ^^;
ハブの分解と玉当たり調整
前オーナーがオークションで中古を買ったと言っていたので、WH-6800の振れ取りが終ったらフロントハブのオーバーホール(分解してベアリングのグリスアップと玉当たり調整)左右のロックボルトに5mmの六角レンチを差し込み、反時計回りに回して左ロックボルトの取り外し
右側はハブ軸と一体になっているため、取り外し可能なのは左ロックボルトのみ
玉押し保持間座(黒いギザギザのパーツ)がロックボルトの圧力を直接受けないためのツメが付いた薄いスプリングワッシャーを持ち上げて取り外し(玉押し保持間座の上に乗っかっているだけ)
黒い防水キャップの横にある長方形の隙間にマイナスドライバーを差し込んで防水キャップの取り外し。 ハブに傷が付くので、マイナスドライバーの先端はティッシュなどを巻いて作業するのがおすすめ
(´・ω・)っ ディーラーズマニュアル 35ページ参照
防水キャップの取り外しが完了。 ここまでのWH-6800のハブの分解手順は、防水キャップ、ロックナット、どちらからでもOK
ハブ軸と玉押しの位置関係を固定している玉押し保持間座(黒いプラスチックのパーツ)を持ち上げて取り外し
玉押しを反時計回りに回してハブ軸から取り外したら、ハブ軸の引き抜き
ボールベアリングはリテーナーに収まっているタイプなので、ハブ軸引き抜き後に落下して紛失する心配は無し。 黒いシールを取り外すとグリスアップしやすいですが、固くはまっていて取り外す事でシールが変形する恐れもあるためそのままにし、内部の隅に偏って固まっているであろうハブグリスを有効活用するべく、オイルを1~2滴ベアリングに垂らしたら粘度を少しだけ低くしたグリスでグリスアップ
続いてWH-6800、リアハブのオーバーホール(分解してグリスアップと玉当たり調整)
リアハブの分解手順はフロントホイールと一緒ですが、フリーは構造上チェーンやスプロケのオイルに付着した砂粒などのゴミが落下して入り込みやすい位置関係にあり、ベアリングもリテーナーがないオーバーホール中に落下しやすいタイプ。 慎重にハブ軸を抜いたとしても0.1mmにも満たない見えない砂粒が混入して本来のハブの寿命を縮めてしまいやすく、紫色のハブグリスもあふれ出ているのでこちらは完全な洗浄とグリスの打ち替えが必要
緩めにはまっている黒いシールを取り外し、内部にグリスが流れていかないようワイプオールやウェスにパーツクリーナーを吹き付けグリスの拭き取り。 フリー内側のスプロケのロックリングを固定するネジ溝には0.1mm以下の砂粒などが入り込んでいるので小さいブラシなどでかき出し、念入りに洗浄。 フリーを取り外す場合は14mmの六角レンチが必要
(´・ω・)_/ 黒いシールをはめた時にベアリングが接する場所以外にグリスが付着しないよう、精密機器の取り扱いレベルの慎重さでオイルを添加してハブグリスと同程度に粘度を調整したグリスをまとわせたベアリング13個を並べ、シールを戻してWH-6800のリアハブのグリスアップが完了。 これくらいグリスが入っていれば偏ったり、多少揮発しても常にベアリングにグリスが付着し続け当分メンテナンスせずに済む計算
ハブ軸を差し込んでフリー側を下にしたらギザギザの玉押しをハブ軸に入れて時計回りに回していき、丁度良い玉当たりの感触の位置でストップ
黒い玉押し保持間座を被せれば玉押しとハブ軸の固定ができ、WH-6800の玉当たり調整は完了
この玉押し保持間座が良く出来ていて、表側の穴は丸形の両端をカットしたハブ軸の先端形状と合致。 内側のギザギザは玉押しのギザギザと噛み合い、ハブ軸と玉押しの位置関係を固定するデジタルアジャストシステムと呼ばれる仕組み。 ブレーキレバーのアジャスターを固定するロックリング同様、なぜか力のかかりそうな一部パーツをプラスチック製にしてユーザーを心配させるのがシマノ流。 既に2人のオーナーが使用した中古のWH-6800ですが、破損もクラックもないので回転が渋くなるほどゴリゴリに玉当たり調整しない限りは玉押し保持間座はプラスチック製でも割れず、耐久性、寿命には意外と問題が無いようです(´・ω・`)
非常に短時間でWH-6800の玉当たり調整を終えられるデジタルアジャストシステムですが、手に持って完璧と感じる感触と、実際に走行した時にハブに加わる力にはかなりの違いがあるため、走行中のハブの負荷を再現して玉当たりを確認するためにはフレームに取り付けた状態でリムを左右に動かしてハブのガタつきを確認する必要あり。 案の定玉当たり調整が不完全でハブがわずかにガタガタしており、フロントホイールの玉当たり調整はやり直し
スポークの本数、位置を目安に玉当たりをチェックしていると、1ヶ所だけわずかにガタがある所があり、少しだけ玉当たりを強く調整すれば解決するものの、1つだけ若干小さめのベアリングが入っている? と仮定すると、他のベアリングにとっては悪影響になるためフロントホイールのハブの玉当たり調整は終了
リアホイール側は手で感じる玉当たり調整と一致していたので、WH-6800の玉当たり調整は終了。 従来の玉当たり調整に比べれば非常に楽なデジタルアジャストシステムですが、実際には納得いくまでフレームに取り付けてのチェック作業が何度か必要。 組み立てていないフレームやクイックよりも着脱の早いスキュワーがあると玉当たり調整のガタを確認するための作業スピードが上がるのでおすすめ(´・ω・`)
これでWH-6800のオーバーホールは終了。 中古のホイールを購入するとトータル費用は抑えられますが、すぐには走れずメンテナンスにも時間がかかるので、良い子は新品もしくは走行距離の少ない新古品辺りを買うのがおすすめ(´・ω・`)
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コメント
No title
それにしてもアルテグラのホイールが1.5万円というのは、掘り出しモノでしたね。
しかし、調整は本当に手間がかかりますし、うっかりすると慣れていなくて本当に「爆発」も!
良い子は確かに「新品」「新古品」をというのはうなずけます。それでも、自分でやることが楽しい方(もちろんやれる方ですが!)にはたまらない時間でしょうね。
しばらく楽しめますね(*^_^*)
2021-09-27 23:18 torikera URL
Re: No title
2021-09-28 22:46 FUCHS URL